【鍵はリズム】フランス語のリスニングが英語よりも得意に感じる件

フランス語

個人的にはフランス語のリスニングは英語のリスニングよりも得意だ。

言い換えればフランス語の聞き取りは英語よりもカンタンに感じるわけだが、これを「言語リズム」の観点で考えてみました。

結論からすれば、フランス語のリズムは日本語と似ているのでカンタンに感じるのだろう。ちなみに英語のリスニングに関しては「アクセントをシッカリと捉える」ことがますます重要だと考えられる。

言語のリズム!?

フランス語のリズムは日本語と似ている?

まず言語のリズムは3つに大別できる。1つ目は強勢拍リズム(stress-timed rhythm)2つ目は音節拍リズム(syllable-timed rhythm)3つ目はモーラ拍リズム(mora-timed rhythm)

強勢拍リズムは、強勢=アクセントが置かれる音節から次に強勢が置かれる音節までの間隔が等しくなる。聴覚的な印象から強勢拍リズムを「モールス信号リズム」とも言われるようです。

音節拍リズムは、各音節の長さが等しくなる。音節拍リズムも聴覚的な印象から「機関銃リズム」と言われる

モーラ拍リズムは、子音音素+母音音素で出来上がるモーラが等しい間隔で現れる。

リズム

強勢拍リズムの言語・・・英語、アラビア語、ドイツ語、ロシア語など
音節拍リズムの言語・・・中国語、イタリア語、スペイン語、フランス語など
モーラ拍リズムの言語・・・主に日本語(※)
※日本語は「音節拍リズム」に属するが、モーラ(=ひらがな1文字)がリズムよく繰り返す「モーラ拍リズム」と言われる

いくつか論文を見てみると、日本語のみ特殊なリズムを持っているようです。

Typical examples of stress-timed languages include Dutch, English, German, etc.
Representative examples of syllable-timed languages include French, Mandarin, Spanish, and so on. 
Bloch (1950)Han (1962), and Ladefoged (1975) propose a third type of rhythm, mora-timed languages, which is mainly exemplified by Japanese.

https://akjournals.com/view/journals/2062/68/3/article-p350.xml#B1

なるほど日本語話者は言語リズム的にはアマノジャク的な立場にいるのでしょうか。

強勢拍リズム言語 👉 英語

強勢拍リズム(Stress-timed language)といえば英語が代表格。等しい間隔でアクセントが現れるので、例えば以下の文章は全て同じ時間内で読まれる

全て「タン・タン・タン」と3つのテンポで読まれる

Dogs chase cats.
The Dogs chase cats.
The Dogs chase the cats.
The Dogs will chase the cats.
The Dogs will be chasing the cats.

こちらの動画でも確認できます:https://www.youtube.com/watch?v=sUMM5eCvi8w


また「アクセントを強く発音」すると同時に「それ以外は弱く発音」されます。

例えば「Because of my job」は2つアクセントがあり、間に挟まれる音は弱く速く発音されるので、[kəzə mɑ dʒɑ] のように発音されます。


英語の上達には「アクセント」に慣れていくことが重要。

どうやって鍛えるか。これはたくさん聞いて、たくさん話して、を繰り返してリズムを定着させるしかないですね。特に「アクセント」を拾う練習をするのが良いでしょう。

音節拍リズム言語 👉 フランス語

音節拍リズム(Syllable-timed language)は母音を中心として音の塊でリズムを取っていきます

音節を区別するには発音記号を見ると分かります。

発音記号で「.」(音節境界)というマークで区切られているものが音節です。フランス語の Aujourd’hui(=本日)の発音記号を見ると /o. ʒuʁ. dɥi/ と音節が3つことが分かります。

または辞書で「・」で区切られている場合もあります。ちなみに英語の today(本日)を辞書で調べると “to・day” と出てくるので音節が2つあることが分かります。

音節拍リズム言語の場合、すべての音節がほぼ等しい長さで発音される傾向にあります。

例えば ヴェロニカ という名前。

音節拍リズムのイタリア語(Veronica)やスペイン語(Verónica)で発音すると「ヴェ・ロ・ニ・カ」という発音となる。一方で強勢拍リズムの英語で発音すると「ヴェローニカ」となり「ロー」は強くゆっくり発音され、それ以外は弱く速く発音される。

以下の動画で確認できます(※ 1分51秒 のところは “stress-timed way of ~” が正しいようです)

モーラ拍リズム 👉 日本語

これは日本語特有のリズムのようです。

モーラ拍リズムと呼ばれるもので、これは、世界の言語の中で日本語しかなくて、音の単位(モーラ=日本語では五十音)の1つ1つを同じ長さで発声するというものです。

〜中略〜

アジアの多くの言語も音節拍リズムで、日本語は世界の言語の中で、少なくともリズムという点ではガラパゴス化していて、日本語話者が、英語が不得意だというのはある意味必然かもしれません。

http://furue.ilab.ntt.co.jp/book/201606/contents1.html

例えば俳句が良い例で「ふるいけや かわずとびこむ みずのおと」と1つずつシッカリ発音しますね。

これだと、長い文章ほど長い時間をかけて発話されます。日本語は早口だとも言われます。他言語と同様の情報伝達速度を出すためには速く話さないといけないのでしょう。

たとえば英語では「Dogs chase cats.」も「The Dogs will be chasing the cats.」も殆ど同じ時間で発音されます。

日本語の場合は「犬は猫を追いかける。」と「その犬はその猫を追いかけているだろう。」と2倍ほどの時間がかかります。

3つのリズムを比較してみる

早稲田大学リポジトリに掲載されていた論文を参考にしてみると、以下のようにリズムが異なる。

これを見ると英語と日本語のリズムはだいぶ異なっている一方、ランス語と日本語のリズムは比較的似ている

このリズムの違いから「フランス語のほうが英語よりも聴き取りやすい」という感触を得ているのだろう。

それでは「リズムが鍵を握っている!」かと言われれば、どうやらそう単純な話でもないようです。

物理的に発話リズムを計測した調査報告から,聴覚印象による等時性は必ずしも確認されないことが明らかになった(Lehiste 1977,Beckman 1982)。このことにより,世界の言語を強勢拍リズムと音節拍リズムに二大別できるのか,またリズム類型の客観的な証拠を示すことができるのかが問われ,リズム類型の実在性を探る多くの研究が行われてきている。

http://hdl.handle.net/2065/36501

結局は多聴で鍛えるしかない

いずれにせよ 英語のリズム と 日本語のリズム はまるで異なることは確か。

日本語を母語とする多くの日本人にとって英語を代表とする「強勢拍リズム言語」を聴き取れるようになるためには相当の訓練が必要なのだろう。

やることは変わらず多聴。筆者も引き続きリスニング練習を日々つづけていこうと思う。

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